コ ラ ム / インタビュー

「組織風土改革で経済成長につなげる
真の「働き方改革」を・・・」(後編)

株式会社セフィーロ 代表取締役 社長 峯村 隆久

4.労働時間でなく、労働価値を重視する

 ダイバーシティに関して歴史が古い米国の企業ではダイバーシティを「戦略を支える基盤」と捉えています。女性、少数民族、障害者などの少数派・弱者の意見を積極的に生かして「独自の価値を持った商品・サービスを生み出す」「独自の仕事のやり方を生み出す」ということにつなげようとしているのです。

 その会社にしかない独自の価値を持った商品・サービスによって、新興国企業の商品・サービスとの価格競争にならないようにしています。また、当社にしかない独自の仕事のやり方によって飛躍的に生産性を高めて圧倒的な企業競争力を実現しようとしています。

 働く人たちは、「労働力×時間」の提供するのではなく、「新たな価値」の提供が重要となります。この価値観では、「時間」に縛られる働き方は必要なくなります。

 独自の価値を生み出すことが重要だからこそ、少数派の意見・弱者の意見が貴重であり、マイノリティーの労働環境を良くすることは経営者にとって重要な課題です。

 新たな価値を生み出すためには精神面での余裕も重要です。過重労働は話になりませんし、価値創造にとってプライベートを含めた生活の充実が非常に大切です。企業として社員の生活の充実は戦略を実現するための基盤になるのです。

5.組織風土改革で真の働き方改革を

 日本では高度経済成長で生活必需品が普及し、バブル経済でぜいたく品も普及し、まさにモノ余りの時代になりました。モノ余りの時代で企業が単純に生産性を高めると、価格競争がさらに激しくなりデフレサイクルに入ります。価格競争が厳しいと人件費の負担がどんどん増すため、給料を上げることなく社員に頑張ってもらしかなくなるのです。

 モノ余り時代を先に経験している欧米では、企業経営のあり方とそれに伴う働き方の変革に取り組まざるを得ませんでした。そして「努力と時間を重視する働き方」から「新たな価値を生む働き方」を重視する価値観に変えてきたのです。

 経営者や働く人の価値観を変える取り組みを「組織風土改革」と呼びます。組織風土改革は、経営環境の変化とそれに基づく価値観の変革の必要性をしっかりと理解し、その企業に応じた「めざす組織像」と「重視する価値観」を明文化することからスタートします。「重視する価値観」を建前ではなく、思いのこもった内容にし、経営者自ら率先して全社員に浸透をするということが必要なのです。

 組織風土改革で、価格競争にならない価値創造の経営に転換し、日本経済の成長につなげる真の働き方改革を実現してほしいものです。

~執筆者紹介~

三菱重工業、日本能率協会コンサルティングを経て現職。
生産性向上を中心としたコンサルティングの経験から組織風土改革の重要性を実感し、組織風土改革に本格的に取り組む。多くの企業のコンサルティング経験に基づいて、組織風土改革の成功のための理論を体系化し、職場密着型での改革支援をしている。
日本能率協会では「職場力向上のための組織風土改革セミナー」の講師として登壇。企業内の組織風土改革や働き方改革のために日夜コンサルテーションを行っている。

株式会社セフィーロ
代表取締役社長
峯村 隆久

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